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現生最古の両生類 アシナシイモリのゲノムが相次いで公開される

今年,2019年にはいって「アシナシイモリ」こと Caecilian のゲノムが相次いで3種も公開されている.

これらは現在NCBI(National Center for Biotechnology Information)で利用可能な状態で公開されている.

これまでの両生類ゲノムの惨状

これまで両生類のゲノムのカバー率は散々なものであった.

“三大モデル生物”として「マウス」「アフリカツメガエル」「ショウジョウバエ」がよく挙げられるが,これまで両生類の研究材料はこのアフリカツメガエル・ネッタイツメガエルが主であった.

サンショウウオ系はゲノムサイズがとても大きいこともあり,解読が困難ということもあり,現在も多分世界のどこかで解読が試みられているが,いかんせん他の系統と比べるとかなり少ないのが現状である.

現生両生類は主に「有尾目」「無尾目」「無足目」の3つの系統群に分類される.

現生両生類の系統樹

今年に入って無足目の三種が公開されるまでは有尾目で1種(メキシコサンショウウオことウーパールーパー),無尾目で6種(ツメガエルのほか,ウシガエルなども)とかなり偏りがあったことがわかる.

公開された無足目(アシナシイモリ)のゲノムは?

今年に相次いで公開されたアシナシイモリのゲノムは以下の種である.どれも染色体レベルでアセンブルされており,大変な驚きである.

これは相当なアシナシイモリのマニアが存在するかと思ったが,NCBIが投稿しているとのことなので「これがNCBIの本気」とまで言わんばかりである.

2020/01/17訂正:
脊椎動物ゲノムプロジェクトの一環として読まれていることを知った。系統関係や進化を明らかにするために読まれているようで、全ゲノム解析などを行う際には注意が必要。
脊椎動物ゲノムプロジェクト(Vertebrate Genome Project)について

Microcaecilia unicolor

Microcaecilia dermatophaga
Wilkinson et al., 2013 Fig5より引用.図の上部半分を引用.
これは公開されてるMicrocaecilia unicolorとは別種だが同じ属.

ギアナに生息するアシナシイモリ.湿った森林などに生息する陸生種.

Geotrypetes seraphini

1883年の記載に際したスケッチ(Alphonse Trémeau de Rochebrune,フランスの動植物学者)

熱帯域に生息する陸生種.

Rhinatrema bivittatum

Leandro J.C.L. Moraes, Alexandre P. de Almeida, Rafael de Fraga, Rommel R. Zamora, Renata M. Pirani, Ariane A.A. Silva, Vinícius T. de Carvalho, Marcelo Gordo, Fernanda P. Werneck. – https://zookeys.pensoft.net/article/20288/
CC BY-SA 4.0
これは同じ科だが属が異なる別種の参考画像.

南米北部に生息する陸生種.最もアシナシイモリの中で「古い形質」を持つことが知られており,例えば「鱗」がまだ存在しているなど原始的な両生類の形態を伺わせる.

以上の三種であるが,どれも陸生種である.しかし実は水棲種も存在し,そういった点も含めて今後もまだまだ読まれる余地はあるだろう.

今後アシナシイモリの研究が進む可能性

正直アシナシイモリについての論文は少ない.例えばアシナシイモリはその「触手」によって空気中の”匂い物質”を感受して鋤鼻器官に運んでいることが示唆されているが,その触手の発生起源が何であるのかということはあまりはっきりとはわかっていない.一説には「眼」に関するものからできたのだともあるが(Billo et al., 1987).

いかんせん古い解剖学的な論文ばっかりであまり研究は進んでいない.

とはいえ,日本国内で流通しているかといえば,そうともいえず,極稀にマニアックなショップでの取り扱いがあるくらいである.価格も流通量が少ないだけに2万円程度するため,バシバシ使う実験には向かないだろう.

ただ,比較ゲノム学などの分野においてはこのゲノムの公開は非常に大きな意義を持ち,初期の両生類がどのようなゲノム構造・遺伝子などを持っていたかということについてもこれから明らかになっていきそうだ(というか明らかにしていきたい).

個人的なことだが,アシナシイモリは見た目気持ち悪いのであんまり飼いたいとは思えない.ペットとして流通しないのはそこにあると思う.

参考文献

  • Billo, R., & Wake, M. H. (1987). Tentacle development in Dermophis mexicanus (Amphibia, Gymnophiona) with an hypothesis of tentacle origin. Journal of Morphology192(2), 101-111. リンク
  • Wilkinson, M., Sherratt, E., Starace, F., & Gower, D. J. (2013). A new species of skin-feeding caecilian and the first report of reproductive mode in Microcaecilia (Amphibia: Gymnophiona: Siphonopidae). PLoS One8(3), e57756. リンク
  • Leandro J.C.L. Moraes, Alexandre P. de Almeida, Rafael de Fraga, Rommel R. Zamora, Renata M. Pirani, Ariane A.A. Silva, Vinícius T. de Carvalho, Marcelo Gordo, Fernanda P. Werneck. – https://zookeys.pensoft.net/article/20288/
    CC BY-SA 4.0 のもと,画像引用.

1件のコメント

  1. ピンバック:脊椎動物ゲノムプロジェクト(Vertebrate Genome Project)について – Kim Biology & Informatics

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