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ポリプテルスを陸上で飼育する方法

はじめに

数年前,ポリプテルスが陸上飼育を長期間行うことで歩行パターンが変化し,胸鰭を支える骨格において可塑的な変化が生じるという論文が発表された.

Standen, E. M., Du, T. Y., & Larsson, H. C. (2014). Developmental plasticity and the origin of tetrapods. Nature513(7516), 54.

2014年の論文だが,当時は世界中のメディアから注目され,日本国内でもいくつかのネットメディアにおいて日本語の記事として少し紹介されていた.

Yahoo! 知恵袋等にも「ポリプテルスを陸上飼育する方法は?」みたいな投稿が出ていたくらいなので結構一般社会に与えた影響も大きかったことであろう.

参考URL: セネガルスの陸上飼育というのを見ました。

今回の記事は「ポリプテルスをいかにして陸上飼育するか」というその手法のみに着目し,述べていくこととする.

ちなみに私自身も追試を行い,陸上飼育が可能であることを確かめている

成功までにはコツが必要で,ある程度の死亡数は見込んでおいたほうが良い.また十分な設備と十分な期間が必要なのでお子さんの夏休みの自由研究には向いていないのでご注意を.

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実験材料

生体

ポリプテルス・セネガルス(Polypterus senegalus)が用いられている.

全長およそ7cmのものが用いられている.一般的にこのサイズのポリプテルス・セネガルスはまだ”若い”印である「縞模様」のようなものが見られるが,外鰓は見られない.当然だがこのサイズでは普通に肺を持ち,肺呼吸をすることが可能である.

他のポリプテルスで試したという報告はないが,この種類(ポリプテルス・セネガルス)が一番流通しており,なおかつ安価,飼育も楽,そこまで大きくならないということから国内のポリプテルス研究市場ではよく用いられる.

飼育設備

ここがキモである.とにかく大きい水槽が必要だ.論文では300ガロン(=1135.62 L)の水槽(濾過槽・Control合わせて)を使っている.

「水を浅くすればいいや~」という軽い考えでは絶対失敗する.水が浅い状態だとそれだけ水量が少ないのですぐに水質が悪化し,魚が死に絶える.

論文ではこのような大きな水槽にメッシュの床を作り,水深を3 mm程度に保つことでその環境を作り上げている.つまり,床を持ち上げる機構か吊り下げる機構を作らないといけない

ちなみに2019年に出た論文では~40x50cmのメッシュの床であることが記されている.さらに水深は1mmで飼育したと記述している.2019年の論文では2014年に使用したポリプテルスの固定したサンプルを使っているはずなのでプロトコルが変わっていることになる(もしくは追加実験として7日間だけ陸上飼育しているのでそれの条件なのかもしれないが,どちらにせよ不明瞭).

Turko, A. J., Maini, P., Wright, P. A., & Standen, E. M. (2019). Gill remodelling during terrestrial acclimation in the amphibious fish Polypterus senegalus. Journal of morphology280(3), 329-338.

さらにこのメッシュの床に歩きやすいように小石や,生息環境を再現するかのように草などを敷き詰めることでポリプテルス・セネガルスのストレス軽減を目論んでいたようだ.

水槽の大きさはともかくとして,きちんとした循環設備を用意しないことにはすぐに死に絶えることになるので注意すること.

もちろん水温は27℃程度にヒーター,クーラーで維持されている.

高タンパクの餌をあげていたらしいが,その製品名までは不明.アカムシやおとひめといった普通の人工飼料でも飼育は可能.

ミスト

かなり重要な装置.水深を浅くすると体の上半分が出ることになるのでそこから乾燥し,水分が失われていく.

水面全体を覆えるほどのミスト発生装置(フォガー)が必要となる.これについてはAmazonで安い製品が販売されているのでそれを使うと良い.

ただしこの製品は長期間連続運転をすると壊れる.そのため,複数台をタイマーなどで交代で切り替えながら使うことを推奨する.

その他

部屋の温度にも注意すべきだ.外気に接している分普段水中で飼育するときよりもデリケートなため,慎重に部屋の温度を管理しなければならない.

実験方法

買ってきて最低一ヶ月は完全に水中で飼育した.

2週間に一回水を20%交換した.

餌は毎日やった.

と2019年の論文の方にはそう記載されている.2014年の論文もおそらく同様の方法であると思われるが,あの歩くポリプテルス・セネガルスは8ヶ月もの長期間の陸上飼育を経てようやくああなったという具合なので根気よく続けるほかない.

ちなみに陸上飼育の群は半数近くが死んだようだ.

最後に

論文に掲載されている分の実験プロトコルを簡単に日本語にしてまとめた.

記載しなかったような細かなコツ等あるのでご自身で試行錯誤しながらやるといいだろう.

もしこの実験に強い興味がある/行っている国内の院生・研究者がいたらぜひどこかでお話しましょう.

というかこの論文の研究グループはどうやらもうこの陸上化研究をやめてしまったらしく世界でやってるの私くらいかもしれないので寂しいのです.

参考文献

2件のコメント

  1. ピンバック:ポリプテルスの飼い方 - Kim Biology & Informatics

  2. ピンバック:手足は切っても再生する? - 四肢再生機構の起源に迫る - Kim Biology & Informatics

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