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系統樹の見方をわかりやすく解説

マニアックな記事が続いているが、本サイトの目的の一つに「一般社会に向けた進化生物学啓蒙活動」があるので何か書いておこうと思いたち、今回は系統樹の読み方・見方について解説を行うことにした。

よく博物館などに行くと必ずと行っていいほど生物のパネルには「系統樹」による解説が存在する。

この系統樹というものはそもそもかのダーウィンの頃には存在しており、最初に描いたのはエドワード・ヒッチコックであると言われている。

こんな図を見たことはあるだろうか。

ヘッケルによる系統樹

これは生命の進化を「樹」に見立てて表したもので、生物の「分類」を「枝」に見立てている。

すべての生物はある1つの種から生じ、その種がいろいろな「枝」に分かれ、さらにその枝がまた新たな枝に分かれ……といった具合にどんどん枝分かれしていき、最後には「葉(種にあたる)」がつく、といった具合だ。

この系統樹という考え方は現在広く受け入れられているが、分子生物学の発展に伴い、実際はきれいに枝分かれがしており葉がはっきりわかれている……というわけではなく、その葉同士も入り乱れている、という見方もされている。

細かい話は別の機会に譲るとして、今回はこういった「根」が存在する「有根系統樹」についての「読み方」を解説する。

キモは「根」と「節」

有根系統樹を読み解く上で重要となるのが「根」と「節」だ。

系統樹における「根」とはなにか? 一例を取り上げて見てみよう。

とある遺伝子のアミノ酸配列をNJ法で描画した系統樹

青い丸で囲った部分のうち、左側、すなわち「すべての系統樹の根本」こそが「根」である。(それっぽいことを言っているが当たり前のことである。)

この「根」というものは「系統樹内の全生物の共通祖先」を示すものである。また、この有根系統樹を描く際には「アウトグループ」と呼ばれる「既に一番古いとわかっている」グループを用意して置かなければならない。今回で言えば「ヤツメウナギ」がそのアウトグループに当たる。

つまり、これらの生物はある共通祖先1種からまずヤツメウナギが分かれ、次にゾウギンザメが分かれ……といったことを繰り返した結果なのである(実際はどうであれ)。

次に「節」であるが、これは単純に「根」以外の分岐点のことを指す。つまり、この「節」より下に存在する生物種の共通祖先ということになる。

系統樹は基本的にこれらの「分岐」の繰り返しによって描かれるものである。

これで記事を終わりにしてしまってもいいが、生命系の学部生向けにもう少し専門的な話に掘り下げておこう。

単系統と側系統

分類に関して少し知識のある方ならば「爬虫類」「鳥類」の分け方に少し違和感を感じたことがあるのではないだろうか。

「鳥類」っていうのは「爬虫類」に内包されうるものでしょ、と。

爬虫類から分かれ、恐竜のような動物を経て現在の鳥に至るわけで、爬虫類と哺乳類のように全く別の分類に位置づけられるものとは少しワケが違う。

これはなんというか、歴史的な経緯があるのでややこしくなるのだが、結局の所「鳥類は爬虫類の部分集合のようなもの」ということだ。

このとき鳥類は別の系統群を含まない、「単系統群」であるといい、その鳥類という単系統群を除いた残りの系統群である爬虫類を「側系統群」であるという。

そのスケールバーは何?

この系統樹、よく見たら枝の長さが揃っていない、と気づいたヒトもいるだろう。実際異なっている。そして系統樹によってはその「枝の長さ」に意味があるものもある。

この系統樹はNJ法(neighbor-joining method; 近隣結合法)と呼ばれる方法で作成した系統樹である。もともとは遺伝子のアミノ酸配列からこの系統樹を描いているのだ。

分子進化学において、進化とは塩基配列上の”変化”であるとも言い表すことができる。ざっくりいうと、生物は世代交代を繰り返すうちに遺伝子の塩基配列に変異が入ったりして時間経過とともに変化していく。そしてアミノ酸配列に影響を与えるような変異のうち、それが生存に有利、あるいは有利でも不利でもないものは淘汰されずに残っていく、あるいは残ってしまうことがある。

そうして膨大な時間をかけて繰り返していくうちにもとのアミノ酸配列とはどんどん離れていってしまう。超簡単にまとめてしまうと、こういったアミノ酸配列同士の「変化した度合い・距離」というものから、種間の距離を計算し、系統樹を描いているのだ。(いずれこの辺のことは記事に丁寧に書きたい……)

この図にあるスケールバーや枝の長さといったものはそうした「アミノ酸配列の置換数の尺度」を表している

ただ博物館やNHKの科学番組などで系統樹を目にするとき「万年前」といった単位が書かれた軸を見たことがある人もいるだろう。例えば以下のような図である。

Jones et al., 2019 Fig2 よりCC-BY 4.0に基づき引用。変更なし。

こういった系統樹では(Ma)と書かれているように(これはMillions year ago; ~百万年前)その生物種が分岐・絶滅した時間を表している。

おわりに

一般向けとかいいつつ後半はなかなか難解に、そして専門でやってる人にとってはなかなかにガバガバな書き方になってしまったが、なんとなく輪郭くらいはつかめたのではないだろうか。

今回は有根系統樹のみを扱ったが、世には無根系統樹などいろいろな系統樹が存在する。基本的には「どの葉(種)が近いか」といったことを表す図であるので、そう難しく考えなくても良いだろう。ただ、その尺度がなんであるのか、その系統樹はそもそも何に基づいて描かれたのか (化石なのか、塩基配列なのか、アミノ酸配列なのか、等)は気に留めておいたほうがいいだろう。

おまけ:「ヒトも硬骨”魚類”!?」

意外なことだが、我々ヒトは「硬骨魚類」に分類される。

しかしよくよく以下の系統樹を見て考えて欲しい。軟骨魚類との共通祖先から分岐した「硬骨魚類」はその後肉鰭類と条鰭類に分かれる。この肉鰭類の中から両生類が生じ、有羊膜類、単弓類、哺乳類と進化してきた。つまるところこの「魚」から進化してきた我々も「硬骨魚類」に分類されるのである。

詳しく見ていこう。

魚の大まかな分類

サメのような軟骨魚類に対し、硬骨を持つ魚こと「硬骨魚類」が現れ(図中赤でくくった部分)、そこからあとに条鰭類と肉鰭類に分岐した。条鰭類は結局陸上へと進出することなく、我々が普段よく目にする「真骨魚類」へとまた分岐した。肉鰭類の方はハイギョなどとの共通祖先から両生類が現れ、陸上適応を果たした。そして長い時を経て私達、ヒトへと進化を遂げたのである。

硬骨魚類に我々ヒトが含まれるのならば、 軟骨魚類が含まれた系統群にも属していることになるのでは?  つまり、軟骨魚類も含めた単系統にもヒトが含まれる、と気づく人もいるだろう。

そのとおりで、軟骨魚類と硬骨魚類を含む単系統群は「顎口類」と呼ばれ、顎(あご)のある動物が含まれている(当然だが脊椎動物の話)。我々ヒトもこの顎口類に属している。ちなみに図中にあるヤツメウナギはアゴがないので含まれない。

なんだか不思議な話に思えてくるだろうが、進化を考えるとなんとなく納得していただけると思う。

参考文献リスト

  • Jones, K. E., Angielczyk, K. D., & Pierce, S. E. (2019). Stepwise shifts underlie evolutionary trends in morphological complexity of the mammalian vertebral column. Nature communications10(1), 5071-5071. リンク

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