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オスだってメスを選びたい! – ショウジョウバエの性選択の話

一般的にはメスがオスを選んでいる

一般的に自然界では「メスがオスを選ぶ」といった選択が起きている.よく自然科学番組で派手な格好をしたオスがダンスをしてメスを惹き付ける鳥の話や,メスに贈り物をして気を引こうとするオスのサル,巣を作ってメスを呼び込む魚の話をやっている.そう,一般的にメスの方が繁殖において優位に立っているのだ.

 それはなぜか.端的に言ってしまうと,子孫にかけるコストの差である.

 具体的に言うとオスは精子,メスは卵を作るが,精子の産生コストの方が卵の産生コストよりも圧倒的に小さいのである.ヒトでいうともっとわかりやすいだろう.男は射精してあとはオシマイであるが,女はその後自分の胎内で子供をある程度まで育てて腹を痛めて産まなければならない.そこに大きなコストの差があるのは明白である.

そこでメスはそのコストに見合うだけのオスを選ばなければならない,ということだ.だから自然界ではオスのほうが派手な格好をし,メスを惹きつけ,自分が優秀なオスであるということを主張するのである.

 

では精子産生コストが高まると?

 さて,ここでメスが優位に立っているのは「卵のほうが精子よりも産生コストが高い」という前提があるからだ.では,精子の産生コストが高くなった場合はどうなるだろうか?

 以前の記事でショウジョウバエの精子はヒト精子と比べても遥かに長いしっぽを持つということを書いた.このしっぽには大きなコストがかかるため,作れる精子の数が犠牲になっているほどである.

参考: ショウジョウバエの精子はなぜ長い?

 そう,ショウジョウバエでは精子の産生コストは他の一般的な種よりも高い.そのため,メスの配偶子産生コストによる優位性というものが他の種よりも薄れているはずである,ということで実際にオスがメスを選んでいるのかという研究があるかを調べてみたところ,2006年に検証した論文が発表されていた.

Byrne, Phillip G., and William R. Rice. “Evidence for adaptive male mate choice in the fruit fly Drosophila melanogaster.” Proceedings of the Royal Society of London B: Biological Sciences 273.1589 (2006): 917-922.

結論だけ言うと,「オスはより体の大きいメスを選ぶ」ということ.

一般的にショウジョウバエにおいては体の大きいメスのほうが卵を多く産むことができるので,理にかなった選択であろう.

このように精子コストが増大した種においては「オスがメスを選ぶ」といったような性選択が生じうる,大変興味深い研究である.限られたリソースである精子をどうせならたくさん卵を産んでくれそうなメスに託す,という合理的な選択だろう.

 

ヒトという変な生き物

ヒトもオスは下手すれば一生かけて多大なコストを払い続けねばならない可能性があるため,実際オスもある程度慎重にメスを選んでいる.ただその点において昨今流行りの「病弱キャラ」のウケが一部男子において人気なところを見ていると,必ずしも適応度を高める方向の選択が行われているというわけではなさそうだ.

2件のコメント

  1. ピンバック:ショウジョウバエの精子はなぜ長い? - Kim Biology & Informatics

  2. ピンバック:地球上で一番長い精子を持つ動物は? – 知られざる交尾後の性選択 – Kim Biology & Informatics

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