生物系、とりわけ分子生物学系のラボではマイクロピペットの存在は欠かせない。肌身離さずという人も少なくないのではないだろうか。
マイクロピペットは国内外様々なメーカーから発売されており、精度や大きさ、ストロークの深さ等々多種多様なラインナップが存在する。
以前の記事でも少し触れたことがあるが、私はそんな中でもニチペットが大好きだ。ニチペットとはニチリョー(NICHIRYO)という会社が発売しているマイクロピペットのブランドである。
出会いは学部2年の頃……一年ほど自主研究で在籍していたラボで使ったのが Nichipet Ex II だった。それまでは学生実験でめちゃチープなピペットや高校生の頃はギルソンのピペットマンだったりだったので、そのダイヤルの回しやすさに驚いた。
片手でロックを外し、くるくるとそのまま片手で回せるのは左手にキャップを開けたままのチューブがあってもラクラクだった。
正式に配属となったラボはまたギルソンのピペットマンだったが、正直コレはそもそもが回しづらいし手袋をはめた状態で回すと手袋がダイヤルに巻き込まれるという致命的な問題点を抱えていた。
即座に目的の容量に合わせることができて、なおかつロックで誤動作が起きないというのがこのNichipet Exシリーズの良いところだ。
自分の研究費を得たらまず先にこのNichipetを買おうと決めていた。ラボはギルソンだったので……(道具にこだわりの強いタイプのヲタク)
Nichipet ExとNichipet Air
予算を獲得したので、自分専用のピペットを買おうと決めた。私の用途的にはオートクレーブも有機溶剤も使わないので普通にNichipet Ex IIで良かった。ただその頃は大量のピペッティングが必要な実験を(本来はマルチチャネルピペットでやるようなこと……うちのラボにはマルチチャネルピペットはない)やっていたのでできるだけ軽いものがいいなと思った。
ニチリョーのウェブサイトを見たところ、ラインナップにNichipet Premium LTというものがあった。軽いのいいじゃんと思ったが流石にこのピンクはちょっとないなと思って見送ることに。他にいいのがないかと物色しているとNichipet Airというものが。これまでで最も軽いというモデルである。
デザインが可愛い!!!! パステルカラーが大好きでカラフルに揃っているので”映える”のだ。
一目惚れである。いや頻繁に使うものだから機能の次にデザインも大事でしょ。
ただ問題は私が大好きだったNichipet Ex系の「ロックと高速回転機構」が採用されていないということ。独立させたというのがこの商品のウリらしいが、私としては正直アレは残してほしかった。
どうしてもそれが気がかりだったので、代理店を通じてニチリョーから実機レンタルを行った。
やっぱ色が可愛いね。好き。
さて気にしていたダイヤル……
うーん、高速に目的値まで持っていくにはNichipet Ex系のほうが有利だけど、ピペットマンのように手袋が巻き込まれるという心配はなかった。ロック機構がないからといって使っている最中にずれることはないし、片手で回そうと思えば回すことができる。そんなような適度な硬さ。
Nichipet Ex IIに慣れていたので何度か目盛りを見る方向を間違えたりしたがこれは慣れ。使いながらではNichipet Airのほうが見やすい。
あとは容量が引っ掛けたときに表に来るところにきちんと書かれているのが良い。ピペットマンは正直上部を見るまですぐにわからないので煩わしく感じている(一応赤字表記で判別できなくもないが)。し、上部の文字も小さくp200とp20が似た色なので分かりづらい。
その点Nichipet Airははっきりと色分けされている上に容量もどこから見てもわかるように書かれているので間違えにくいのである。ただやはりp200とp20が似た色なのはどうしようもないものなのか……。
結局Nichipet Airを買った
買った。
ただ、予算は申請よりもだいぶ減額されたので(なんか今年のDC科研費みんな少ない様子)、まあそんな贅沢もできず、4本レンタルしたが買ったのは3本。0.5-10, 10-100, 100-1000。よく考えたらこれでもまあ十分かなって。あと色もはっきり分かれるのでわかりやすいしね。
マイニューギア。
機能もそうだけど、デザインがやっぱりいいよなあって。より現代的なデザインが好きです。古代の研究してるのにね。
あとはNichipet Ex系にはある「セット販売」がなかったのが少し残念。割高になっちゃうからね。まあ2020年に出たばかりの新製品だからかもしれないけども。
さいごに
実験が楽しくなるようなデザイン、それでいて高い精度、識別のしやすさ、何より軽いこと……Nichipetの技術が盛り込まれた新製品、Nichipet Air。従来のロック式ダイヤルを採用していないという不満点はあるものの、それを上回る使い勝手の良さがこの製品の良いところだと感じた。
あと散々ギルソンのピペットマンをディスってるような感じになってしまったが、あちらはあちらで「高い耐久性」という点で優れている。学生がテキトーに扱ったりするような現場でもまあなんとか死なずに生き続けている。
みんなもニチペットライフをエンジョイしよう。