京都工芸繊維大学にある食堂、「アルス」ことふじかつが恋しい――
今回の記事は本当にただの戯言なのだが、ふじかつが本当に好きだった。
京都工芸繊維大学出身で、学部の頃4年間そこでお世話になった。
生協の食堂に初めて入ったとき、「某大受験のときに食べたそれ」と同じじゃんって事に気づき、Twitterで見ていくうちに全国の生協ってだいたい同じもの提供してるんだなって気づいた。
別に味も美味しくないし、値段も安くない。土曜日も開いているという点は優れているが、別段優れた点はない(ただし途中からうどんの質が変わって大変美味しくなったのでうどんを食べには数ヶ月に1度の頻度で行っていた)。
生協食堂は次第に魅力的でなくなった。
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生協の隣にはウッドデッキがあり、秋ごろになると銀杏がすごいことになるのだが、その銀杏と若干砂利を踏みしめて行く先に「アルス」と書かれた食堂があった。
正式名称は「ふじかつ」らしく、その前に入っていた店が「アルス」だったとか。アルスの2階には「ベリタス」という昼限定のオムライス・パスタ専門店があった。こちらもおなじふじかつが経営している。
アルス、ベリタスの名前の由来はどっか遠い異国のナントカだということを博識の友人から2回ほど聞いた覚えがあるが何だったかは覚えていない。
ふじかつの魅力はなんといっても「揚げたて」のカツが食べれることだった。そして何より安かった。卒業間際に値上げがあったが、確か味噌汁つきで420円だった気がする。
一人暮らしを始めたばかりで、近所に揚げ物を提供するような店がないような田舎から出てきたばかりの私にはこの「揚げたてのカツ」というものが非常に魅力的に見えた。
確か最初はカツ丼をお昼に頼んだのが始まりだったと思う。
カツ丼だけは揚げたてではなかった。ただ、しなっとしたカツがたくさん用意されていてそれを目の前で溶き卵と出汁と共にグツグツとフライパンで煮込むのだ。
ぐっしょり出汁を吸ったカツ、そして卵のちょっと濃い目の味付けがご飯を進ませる。昼の贅沢だった。
カレーは少し辛め、らしい。私は結構好きな味で、よく頼んでいた。ただコールスローがつかなくなるので別途サラダを注文する必要があった。
サクサクの衣とカレーはやはりよく合うものだと思いながら平らげ、満足感を感じながら店をあとにしていた。
ミンチカツ(メンチカツ?)も結構好きだった。量が少ないのと出来上がるまでに時間がかかるのが少々難点ではあるが、数あるメニューの中でも逸品である。
基本的にカツにはソース・ポン酢のどちらかと辛子をつけて食べていた。おいしかった。
味噌汁が結構好きで、具が沢山入っているのに30円。家で味噌汁を作ることはなくなった。
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大学生活も後半になるにつれて夜もお世話になるようになった。夜は夜で「夕定食」なるものがあり、400円で味噌汁付きの定食が食べられる。
私はその中でも「チリソース」系のものが大好きで見かけたら必ず買うようにしていた。また上のベリタスの余りなのか白身魚のフライが夕定食にあるときは必ず買うようにしていた。通常メニューの白身魚のフライとは違うのである。上のベリタスの白身魚のフライのほうが美味しい。
あと「若鶏甘酢タルタル」も大好きだった。ただ大学生活後半になってくると徐々に胃もたれするようになってきて苦しいことが度々あった。ただあれは鳥系のメニューの中でも格別であった。
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研究室は遠く離れたキャンパスだったため、配属後はめっきり足を運ぶ頻度が低くなった。
嵯峨キャンパスの食事情は凄惨なもので、このように手頃な価格で手軽に食べられる場所などなく、「アルス通」だった私も友人もあえなく「パスタ生活」を送る羽目になった。
ただ松ヶ崎キャンパスに行く機会があれば必ず「アルス」には寄っていた。
もはやそこはただの食堂ではなく、食堂を超えた特別な居場所であったかのようにも思えた。
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卒業式の日、私と友人はアルスには行かなかった。
私と彼は気になっていた付近の店でカレーライスを食べた。こだわりのカレーらしく、評判だったらしい。
ただ今となって、私はその味を思い出せない。
どうしても、あの揚げたての衣と少し辛めのカレーが食べたくて――