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これからを見据え、博士課程進学はありなのか、なしなのか

はじめに

今回このような記事を書く背景として現在修士1年の私が「親に博士課程進学を渋られている」ということがある。「行くんでしょ」っていう大学における周りの流れ、そして親戚含め誰一人ストレートに博士課程に進学している人間がいないという温度差から、彼らを説得できるだけのメリットが博士課程に存在しうるのか、今回は調べたなりのことと周りの「温度」について軽くまとめておく。

日本での博士の扱い

なぜ博士課程に進むのを渋られるか。

現在の”日本(Fuxking Cool JAPAN)”では博士号を取得したからといって特別給料などで優遇される、といった風潮はまだあまり大きくない。というのも日本は新卒採用によって得られた社員を終身雇用でじっくり育て上げていくという方針を多くの企業においてずっと採用してきたからだ。だから最短で27歳で初めて社会に出る人間をどこも取りたくなく、取るにしても「新卒同等の賃金」であることが多いように感じるからだ(求人を眺めていても学部より修士のほうが給料が高いのはいいとして、修士と博士の差が5000円しか違わないなんてものもある)。

要は「コスパ」である。

3年間追加で学費を支払って、それで得た職が「修士とそんなに変わらない」給料の職業であったなら、それは相当「コスパの悪い」「頭の悪い」進路選択であろう。実際、ネットで調べていてもこのことについては再三指摘されている。

が、

外資、というか海外に目を向けると話は一転する。

海外では一般に博士は高度な能力を持つものとして企業においても優遇されるからだ。中国なんてそれで博士号取得者をバンバン高給で引き抜いている。その背景には「終身雇用」なんてものはないけれど。

あと「博士は使えない」って話も聞く。まあ色々人を見ていると、たしかに「あれ」って思うような人間に出くわすことが多々ある。そういうの見るたびに「博士のくせに」とか内心思ったりもするわけだが、もちろん全員がそういうわけではない。人格・能力ともに優秀な人間は確かにいる。だから「博士=使えない人間」っていうイメージは捨てていただきたい。修士卒だろうが博士卒だろうがピンキリであるということを、とりあえず念頭においておいてほしい。

また日本でも分野によっては博士が優遇される。工学系がその一番の例だろう。いわゆる「即戦力」に繋がる可能性が高いからだ。

変わりゆく産業界と大学の関係

で、話を戻すが日本ではこれまで終身雇用制度と徹底した新人教育によって「若い人間」で「ある程度の専門性」の人材が好まれてきた。

しかし、最近終身雇用制度を廃止する動きが日本の企業の中でも出てき始めている。そして産業界(糞団連など)から大学側に「即戦力となるような人材を教育しろ」と「新人教育」の部分を押し付けようとしてきている。

つまり、これからの産業界がどうなっていくのか軽く見通しを立ててみると、これからは企業での終身雇用・新人教育を衰退させ、大学で高度な教育を受けたものを積極的に受け入れていきたい、となる可能性が高いということだ。

現在「人手不足」と言われるように「教える側」の人間もどんどん新人教育へかけるコストを小さくしていきたいのであろう。そこで大学で高度な教育・技術を身に着けた人材を雇用することで、安く企業の立て直しを図りたい、という糞団連の意図がなんとなく読み取れる。

無論、大学は大学ですべてが産業に直結するような研究をしているわけではないし、学生全てが「即戦力」となるような教育を受けているわけではない。浅はかだとは思うが、それほどまでに日本の企業らは色々困窮してきているのであろう。

ただ、裏を返せば修士・博士などの高度教育を受けた人間を受け入れようという動きにつながっている、と捉えることもできる(希望的観測)。

博士課程進学のデメリット

さて、ここまで書いていると「おっ、じゃあこれからを見据えるならやっぱりD進じゃ~~~ん」って思ってしまうかもしれないが、待ってほしい。

博士課程は通常3年。医学薬学だと4年もかかる。大学によっては早期卒業みたいなものもやっていたりするが、まあ普通はそれだけかかる。

たいそう賢い方々で構成されている「文部科学省」の方々は博士の能力を大変高く買っておられるようで、きっと卒業後は皆億万長者になるほど高給取りになると信じておられるのか、博士課程の学生への支援がたいそう貧弱である。

学振、DC、などと呼ばれる奨学金制度のようなものもあるのだが、月20万円。そこから税金や年金、更には学費まで引かれるのでトウキョウの大学なんぞに進もうものなら破滅秒読みである。

「奨学金を」という人もいるが、募集を見ていると結構分野が限られている。多くは工学系を対象としているし、文系や非医学系の生物系とか目も当てられない。まあでも中には分野問わず月20万円以上も給付してくれるような基金もあったりするので探して応募してみるべきである。

周りは結構工学・情報系の人間が多いので見ていると有給インターンがあったり、そもそも研究室から給料が支払われているなんてところもある。試薬や設備に莫大な金がかかる実験系の研究室ではまずほとんどありえない話であるが。

要は「博士課程に進学するとお金に困る」ということである。

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また卒業する頃には早くても27歳程度と結構年食ってる。結婚して出産ともなると配偶子のゲノムに変異が入る確率が高くなり、障害児が生まれる確率が高くなる。子供を作ろうと考えているのならば、博士課程進学はよく考えたほうが良い。ただし後述するように結婚によるメリットも存在する。

博士課程在学中に結婚はどうなのか?

よく教授らを眺めていると「学生のうちに」「学生時代からの付き合いで」とかいう人がいる。美人な奥さんをたまの学祭に連れてきては周りの学生から驚きと羨望の眼差しで見られている。

また、在学中に結婚する、という話も度々耳にする。

というのも、男が博士課程に在籍しているがあまりにも貧困極まるので修士卒の女が養っている、というケースが多い。逆はめったに聞かないけれど、そもそも女子が博士課程に進学する事自体が現在レアケースなこともあるだろう。

この学生結婚の経済に関してのメリットとしては「経済上の優遇を受けることができる」ということである。多くの大学では家庭の所得が一定以下の場合、学費を免除するという制度が存在する。そんな感じで扶養に入ることで年間64万(東工大の場合)もの学費を浮かせることができる

ただ大きな選択となる上に、パートナーを手に入れているということが前提なのでこれはなかなかに難しい。

本当に博士課程に行くべきなのかを周りの話も聞いて進学すべき

このように博士課程に進学するにはある程度の経済的負担が必須となる。ほとんどの同期はその頃既に就職して学費を払うこともなく学振の倍近くの収入を得ていることだろう。その中でも本当に進学して貧乏人としてやっていけるのか、自身できちんと考えた上で、周りからの(金銭のみならず)支援や援助といったものが得られるのかどうか、きちんと相談しておくべきである。

また、経済的なこと以外にも自身の研究能力についても第三者からの意見を聞いておくのも良いだろう。私はお世話になった、関わった研究者・教員から行くべきだと勧められていることも博士課程に進もうとする動機の一つとなっている。それらをすべて鵜呑みにする必要はないが(彼らは私達の人生の責任を取ることは全く無いので)、流石に向いていない人間が三年延長したところで学位の取得も難しいだろう。

さいごに

経済的な問題等を除けば、博士号を取ることには非常に大きな意義があると考えており、専門性のみならず研究マネジメント能力など多様な能力を育てる上で有意義な期間になるであろうと考えている。

また、これからの日本は徐々に個人主義の時代へとシフトしていくだろうと考えており、二十年先を見据えた際に国際的に通じるような力をつけておくことは重要となるであろう。

私に博士課程進学を勧めてきて金が無いからつって渋ったときに言われた恩師の言葉を記しておく。

「当時(博士課程・無給ポスドク時代)は苦しかったが、今こうして過去を振り返るとまああの頃のお金なんてちっぽけなものですよ。なんとかなります」

時代もかなり違うが、まあ博士号取得者がよく言う「自分は取って良かったと思うが、他人には絶対勧めない」みたいなもので、苦しかった過去も生存者からすれば良い思い出となるのであろう。

これを最後まで読んだ進学を迷う読者はどう捉えるかはわからないが、これから世の中どう動くかわからない時代、就職しようが生涯安泰ともならない中、なんとかなると希望を抱き、信じるほかないのではないだろうか。